お節介な訳文になっていませんか?_文芸翻訳のコツ#10

自らの誠実さに裏切られないこと

僕の経験で言うと、誠実で真面目な方ほど、あらゆることを説明しようと試みるようですね。

一方、読み手の想像力を刺激、あるいは利用するのが良い文章だと言われます。

つまり、読者へのサービスとしてあれこれ説明するのは、お節介である場合が多いのです。訳注にしても、昔は訳者がここぞとばかりに訳注を入れたため、原書よりも訳書のページが多くなった例があります。やはり、文章のわからないところは、読者が自分で解決するのが一番でしょう。

訳注の処理のし方

現在では、訳注は最小限に留め、可能なときに日本文の中にさり気なく織り込むスタイルが多いようです。翻訳者にもいろいろあって、自分が知らないことは他人(読者)も知らないと考えるのが普通なようです。しかしこれは大変に難しい作業ですので、その都度、編集者なり友人なりに確かめる必要があるでしょう。翻訳家にはそういうつまらない作業もあるのです。